「ストレッチャー対応の介護(福祉)タクシー」は、寝たきりの方や体を起こせない方が生活していくうえで、大変に便利な移動手段です。
ストレッチャーについてよく知ることで、要介護者への安心・安全な移動の選択肢が広がります。
今回は「介護(福祉)タクシーのストレッチャー」について、その特徴や利用する際のポイントや料金などについて、詳しく解説していきます。
※本記事では、介護保険適用の介護保険タクシーと適用外の福祉タクシーを合わせて、「介護(福祉)タクシー」にという表現を用いて解説しています。
介護保険タクシーと、福祉タクシーのそれぞれの違いについては、以下の記事をご確認ください。

ストレッチャーとは?
ストレッチャーとは、医療や介護の現場で用いられる搬送用のベッドの一種です。
主に、寝たきりの方や体を起こすのが困難な方を、安全かつ安定した姿勢で移動させるために使用されます。
ストレッチャーには、リクライニング機能や高さ調節が可能なタイプなど、利用者の状態に応じたさまざまな種類があります。
ストレッチャーの主な種類
ストレッチャーには主に以下の5種類があります。
- 簡易ベッド型
- 昇降型
- リクライニング型
- 多機能型
- スクープ型
それぞれの特徴と対応シーンをまとめると以下の通りです。
種類 | 特徴 | 対応シーン |
---|---|---|
簡易ベッド型 | 軽量で折りたたみ可能。担架型としても使用でき、収納性が高い。 | 在宅から病院までの短距離搬送や災害時の緊急対応に適している。 |
昇降型 | 高さを調節でき、車両への出し入れ時に腰や膝への負担を軽減。 | 車椅子やベッドからの移乗が多い場面で使用される。 |
リクライニング型 | 背もたれ・脚部の角度を調整でき、上体を少し起こした姿勢を保持可能。 | 心疾患・呼吸器疾患など、仰向けがつらい方や術後の患者。 |
多機能型 | リクライニング・昇降・分離機能など複数の機能を統合。変形も可能。 | 長距離搬送や施設間の移動など、状況変化が多い場合に有効。 |
スクープ型 | 本体が左右に分割し、横になったまま身体の下に差し込んで持ち上げる。 | 骨折や重度腰痛など、体を動かすと危険な患者の搬送時。 |
ストレッチャーが必要な時
ストレッチャーが必要とされるのは、座った姿勢を保つことが難しい方の移動時です。
たとえば、ご高齢で筋力が低下している方、身体に障がいのある方、病気やケガで寝たきりの状態にある方などがこれに該当します。
さらに、手術直後で身体を起こせない方や医師から安静を指示されている方も、無理に座らせることで体調を悪化させるリスクがあるため、移動時にはストレッチャーの使用が推奨されています。
介護(福祉)タクシーとストレッチャー
高齢者や体の不自由な方の安全・快適な移動を支援するために、ほとんどの介護(福祉)タクシーにストレッチャーが搭載されています。
ストレッチャー搭載の介護(福祉)タクシーは、利用者のさまざまな状況や多様なニーズに、幅広く対応することが可能です。
ストレッチャー対応介護(福祉)タクシーの特徴
ストレッチャー対応の介護(福祉)タクシーは、寝たままの状態で安全に移動したい方のために設計された福祉車両です。
一般的なタクシーとは異なり、車両そのものがストレッチャー使用を前提とした構造になっており、身体の不自由な方や医療的ケアが必要な方の移動をサポートします。
車両の特徴として挙げられるのは、「背の高い車体」です。これにより、ストレッチャーを水平のままスムーズに出し入れすることが可能になります。
電動リフトやスロープが備えられている車両も多く、介助者の負担を軽減しながら、乗降時の安全性を確保します。
また、車内は走行中でもストレッチャーがしっかりと安定し、揺れや転倒の心配を最小限に抑える設計になっています。
なお、介護(福祉)タクシーの特徴としては、「介助者のタクシー同乗可能」が挙げられます。
家族や介護スタッフが付き添ってタクシーに同乗できるため、利用者本人にとっても心強く、家族にとっても安心感のある移動手段となります。
※介護保険が適用される介護保険タクシーでは、利用できるのは原則ご利用者本人のみです。
さらに、医療的なニーズに応じて、酸素ボンベや吸引器などの医療機器が搭載可能な車両もあります。呼吸器系の疾患がある方や、吸引処置が必要な方でも、安全に目的地まで移動できます。
こうした医療対応ができる介護(福祉)タクシーですが、運用は一般のタクシーと異なり特定の業者に限られるため、事前の確認や予約時の相談がとても重要です。
ストレッチャー対応介護(福祉)タクシーの主な用途

ストレッチャー対応介護(福祉)タクシーの利用シーンは医療的な送迎だけでなく、日常生活やレクリエーションの外出まで幅広く、状況に応じて柔軟に対応できます。
ただし、利用目的によっては介護保険の適用対象とならないケースもあるため、事前に確認しておくことが大切です。
ここでは、ストレッチャー付き介護(福祉)タクシーの代表的な用途についてご紹介します。
医療機関への送迎(退院・転院・通院)
ストレッチャー付き介護(福祉)タクシーの最も一般的な用途のひとつが、医療機関への移動です。
退院・転院の場合、点滴や酸素などを装着したまま移動が必要なケースでは、車内で寝た状態を維持できるストレッチャー対応介護(福祉)タクシーが適しています。
退院・転院時のストレッチャー付き介護(福祉)タクシーは、病院に相談して手配してもらうのが一般的です。
また、ストレッチャー付き介護(福祉)タクシーは通院にも対応しており、椅子に座るのが難しい方や、一人での移動が困難な方でも、安全に医療機関へアクセスできます。
在宅介護の方が通院時に介護(福祉)タクシーを利用する場合は、ケアマネージャーに相談し、ケアプランを作成してもらいましょう。
公共施設・行政機関への外出や手続
ストレッチャー付き介護(福祉)タクシーは、病院や旅行といった特別な移動だけでなく、役所や公共施設での手続きといった日常的な用事にも利用することができます。
たとえば、
- 区役所や市役所での各種申請や証明書の取得
- 選挙の投票所への移動
- 福祉サービスの申請や更新手続き
- 公共の相談窓口への来所
といった場面では、公共交通機関や自家用車での移動が難しい方にとって、ストレッチャー対応の介護(福祉)タクシーが安全かつ確実な移動手段となります。
また、これらの用途の場合は、介護保険が適用されるケースもあります。
こちらも医療機関への送迎と同様、介護保険の利用を希望する場合は、あらかじめケアマネージャーに相談し、ケアプランを作成してもらいましょう。
私的な外出(旅行・観光・イベント参加など)
ストレッチャー付き介護(福祉)タクシーは、医療目的以外の外出にも活用できます。
旅行、観光、墓参り、冠婚葬祭、親族との再会など、「行きたいけれど移動手段が不安」という場面での心強い味方になります。
保険適用外となる場合が多いですが、安全に目的地へ向かえる手段として、利用者とご家族が一緒に安心して快適に使える移動手段です。
ストレッチャーを利用した場合の料金
ストレッチャー付きの介護(福祉)タクシーを利用する際の料金は、通常のタクシー料金に加え、介助や機材の使用にかかる追加費用が発生する点が特徴です。
まず、基本となる運賃は一般のタクシーと同様に、走行距離や時間に応じて算出されます。
初乗り料金や加算料金は地域や事業者によって異なりますが、例えば「初乗り2kmで780円、以降240mごとに90円加算」や、「30分あたり3,000円前後の時間制運賃」を採用しているケースがあります。
さらに、ストレッチャーを利用する場合は、機材使用料が別途かかります。
使用料の目安は4,000円~6,000円程度で、車椅子(0円〜2,000円程度)に比べてやや高めに設定されています。
これは、ストレッチャーが大型で取り扱いに専門性が必要なうえ、使用後の清掃や消毒などの対応も含まれているためです。
加えて、乗降時の介助や病院内の付き添い、階段昇降などの介助が必要な場合には、内容に応じて500円〜数千円の介助料が加算されることがあります。
特に階段や室内での移動介助、付添が必要な場合は、事前に詳細を確認しておくと安心です。
これらの料金の合計が、ストレッチャー付き介護(福祉)タクシーの総額となります。
なお、介護保険が適用されるケースでは、運賃以外の介助料などが1割〜3割負担になる場合もあります(※ケアマネージャーとの相談とケアプラン作成が必要)。
料金体系は事業者ごとに大きく異なるため、予約前には必ず見積もりを取った上で利用することがおすすめです。
よぶぞーでストレッチャー対応の介護(福祉)タクシーをスムーズに手配
介護(福祉)タクシーの配車アプリ「よぶぞー」では、ストレッチャーの利用を含むさまざまな条件に対応した車両の検索・予約が可能です。
予約時には、必要な介助内容や付き添いの有無、車いす・ストレッチャーの利用可否などをあらかじめ指定することができ、それらの条件に合った介護(福祉)タクシー事業者を探すことができます。
また、事前に目安となる料金を確認できる機能も搭載されており、利用前に概算費用が把握できるため安心です。
初めての方でも簡単に使える設計になっているので、介護(福祉)タクシーの手配に不安がある方にもおすすめです。


ストレッチャー対応介護(福祉)タクシーの法律・安全基準
ストレッチャー対応の介護(福祉)タクシーの運行には、法律に基づくさまざまな基準や条件があります。
とくに、営利目的のタクシー事業者(緑ナンバー)によるストレッチャー対応タクシーの運行は、「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)」の許可を得たうえで行われます。
この制度により、福祉車両(ストレッチャー固定可能な車両)と必要な設備・運転技術を備えた事業者は、要介護者や寝たきりの方を安全に輸送することが可能になります。
一方で、営利目的ではないNPO法人や社会福祉法人などが、自家用車(白ナンバー)で移動困難な方を有償で送迎するための制度が「福祉有償運送制度」です。
これは国土交通省が定める制度で、自治体の認可と申請が必要です。
ストレッチャーを使用した搬送もこの制度で行うことが可能ですが、営利事業者とは別の制度である点に注意が必要です。
また、ストレッチャーを車両に安全に固定する技術や、乗降時の補助方法についても、専用の研修を受講する必要があります。
これは単なる運転技術だけでなく、医療・介護の現場での知識や実践的なスキルが求められる分野であり、サービス提供者には高い専門性が求められています。
加えて、福祉車両の運行にあたっては、安全対策も厳格に定められています。
日本福祉車輌協会などの団体は、事故防止のための車両点検や安全装置の導入、緊急時対応マニュアルの整備を推進しており、利用者の安心を支える重要な基盤となっています。
参考:日本福祉車輌協会
ストレッチャー対応介護(福祉)タクシーの利用にあたっては、このような法律や安全基準の整備があるからこそ、安心して移動を任せられるのです。
介護(福祉)タクシーでストレッチャーを利用する際のポイント
ストレッチャー対応の介護(福祉)タクシーをよりスムーズに利用するために、事前の準備をきちんと行っておくと良いでしょう。
ここでは、利用時のポイントについて詳しくご紹介していきます。
予約時に伝えるべき情報
介護(福祉)タクシーを予約する際、事業者に以下のような詳細な情報をできる限り正確に伝えることが重要です。
健康状態・病状
呼吸器疾患、心疾患、術後の経過中など、移動中に配慮が必要な病状がある場合は、必ず伝えましょう。既往歴や日ごろの注意点も共有しておくと安心です。
医療機器の持ち込み有無
酸素ボンベや吸引器などの医療機器を持参する場合は、その種類とサイズ、使用予定の有無を明確に伝え、対応可能な車両を手配してもらいましょう。
医師の同意書の有無(必要な場合)
状態によっては、医療機関からの「移動に関する同意書」の提出を求められることもあります。
特に、病状が不安定な方や長距離の移動を予定している場合は、事前に主治医へ相談することをおすすめします。
出発地・到着地の詳細情報
施設名や住所だけでなく、「玄関前に段差がある」「エレベーターの有無」など、建物の構造や周辺環境の情報も合わせて伝えると、よりスムーズな対応が可能になります。
付き添いの有無と人数
家族やヘルパーなど、同乗する方がいる場合は、その人数と関係性(例:家族、看護師など)も伝えましょう。車両によっては同乗人数に制限があるため、事前確認が必要です。
家族や付き添い者が必要な準備
ストレッチャー利用時には、家族や付き添い者の準備も大切です。家族や付き添い者は、以下の点に注意しましょう。
必要な持ち物の確認
薬や保険証、診察券、着替え、オムツ、飲み物など、外出に必要な持ち物を事前にリストアップし、忘れ物がないように準備しておきましょう。
病院や施設で急に必要になるものもあるため、余裕を持った準備が大切です。
余裕のあるスケジュール設定
移動時間や診察時間には十分な余裕を持たせることが重要です。
当日、交通状況や施設での待ち時間が発生することも考慮し、焦らず行動できるようスケジュールを調整しましょう。利用者にとっても精神的な負担を軽減できます。
不安を和らげるための事前説明
介護(福祉)タクシーの利用が初めての方には、可能であれば、どんな車両で、どんなスタッフが来てくれるのかを事前に説明してあげることが安心感につながります。
「寝たまま移動できるよ」「スタッフの人が乗るのを手伝ってくれるよ」など、簡単な言葉でも伝えてあげると気持ちが落ち着きやすくなります。
まとめ
ストレッチャー対応の介護(福祉)タクシーは、椅子に座ることが難しい方や寝たきりの方にとって、安心・安全に移動できる心強い手段です。
医療機関への送迎だけでなく、私的な外出や行政手続きといった日常のさまざまなシーンでも活用されています。
身体に負担の少ない移動手段が整っていれば、通院だけでなく外出や社会参加の幅も広がります。
ストレッチャー付きの介護(福祉)タクシーを上手に活用し、ご自身やご家族の生活の質をより良くしていきましょう。