車椅子での旅行は「ハードルが高い・・・」と感じる方も多いかもしれません。
ただ、事前にしっかりと準備をしておけば、ハンディキャップがある方や、介護が必要な高齢者の方など、常に車椅子に乗っている方との旅行を最大限に楽しめるようになります。
とはいえ、
「どんな準備をしておけばいいの?」
「どんなポイントを意識すればいいの?」
という疑問を抱えている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、車椅子で旅行をするときのポイントや、意外と知らない便利なサービスについて詳しく解説していきます。
そもそも車椅子でも旅行を楽しめる?
車椅子に乗っているから、あるいは車椅子に乗っている家族がいるからという理由で、旅行を諦めてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、車椅子に乗っている方と旅行をするときは、様々なポイントに注意し、慎重に準備を進めていく必要があります。
そのため、少々準備に時間はかかりますが、決して「不可能」というわけではありません。
実際に、車椅子で旅行を楽しんでいる方はたくさんいますので、今回紹介する内容を参考にしながら、少しずつ準備を進めてみてください。
車椅子で旅行をするときのポイント
車椅子で旅行をするときのポイントは、主に以下3つです。
- 移動手段をしっかりと決めておく
- 行き先のバリアフリー情報を確認しておく
- 無理なく楽しめる場所を選ぶ
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
移動手段をしっかりと決めておく
車椅子で旅行をするときは、移動手段をしっかりと決めておくことが大切です。
旅行時の移動手段としては、
- 自家用車
- 福祉タクシー
- 電車
- 新幹線
- 飛行機
- バス
などが挙げられますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
車椅子に乗っている方の状態や体調、それから目的地によっても最適な移動手段が変わりますので、様々な要素を加味しながら移動手段を検討していきましょう。
行き先のバリアフリー情報を確認しておく
車椅子で旅行をするときは、行き先のバリアフリー情報を確認しておくことが大切です。
- ホテル
- 旅館
- 観光地
など、あらゆる場所の段差や階段の有無などをチェックしておくことによって、スムーズな移動と観光を楽しめるようになります。
ちなみに、バリアフリー情報については、各自治体が作成している情報サイトや、バリアフリーマップから確認できますので、前もってチェックしておきましょう。
無理なく楽しめる場所を選ぶ
旅行は車椅子に乗ったままでも十分楽しめますが、行き先や目的によっては本人や介護者の負担が大きくなってしまうことがあります。
そうなれば、心から楽しめる旅行を実現できなくなってしまいます。
本人も介護者も楽しめる旅行を実現するためには、無理なく楽しめる場所を選ぶことが大切です。
例えば、
- 車椅子に乗ったままのんびり観光できる場所
- 車椅子に乗ったままでも体験できるアクティビティ
これらを事前にピックアップしておくことによって、全員が旅行を満喫できるようになります。
車椅子で旅行をするときに準備しておくべき持ち物
車椅子で旅行をするときは、以下のアイテムを用意しておくのがおすすめです。
- 雨具
- クッション・ひざ掛け
- 吸水パンツ・着替え
- 予備バッテリー
- 福祉用具
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
雨具
車椅子で旅行をするときは、雨具を用意しておくのがおすすめです。そうすることにより、突然の雨をしのげるようになります。
近年では、車椅子用の雨具なども登場していますので、ぜひチェックしてみてください。
中には、
「傘を持っていけばいい」
と考える方もいると思いますが、車椅子を押しながら傘を差すのは至難の業です。
場合によっては、周囲の人に迷惑をかけてしまったり、転倒や衝突に繋がったりすることもありますので、傘ではなくカッパを用意しておきましょう。
クッション・ひざ掛け
旅行時は、普段よりも車椅子に乗っている時間が長くなります。
そうなれば、当然腰やお尻への負担も大きくなりますので、クッションやひざ掛けを用意しておくのがおすすめです。
そうすることによって、身体の負担を軽減できるため、快適な移動を実現できるとともに、観光やアクティビティに集中できるようになります。
吸水パンツ・着替え
車椅子での移動が長時間になる場合や、行き先に車椅子対応のトイレがあるかわからないときは、吸水パンツや着替えを持っていきましょう。
そうすることによって、万が一の事態に備えられますし、本人も安心して旅行を楽しめるようになります。
予備バッテリー
電動車椅子を利用している場合は、予備バッテリーを忘れずに用意しておいてください。
予備バッテリーと充電器があれば、旅先で車椅子の充電が切れてしまった場合でも、すぐに車椅子を動かせるようになります。
ただし、飛行機を利用して移動する際、バッテリーを機内持ち込みできないケースもありますので、事前に確認しておきましょう。
福祉用具
近年では、全国各地でバリアフリー化が進んでいます。
ただ、全ての観光地や旅行地でバリアフリーが進んでいるとは限らないため、折り畳みスロープや杖などの福祉用具を事前に用意しておくのがおすすめです。
荷物を減らしたい場合は、旅行先の介護用品レンタルショップや、旅先に配送してくれるレンタルサービスを使うという方法もあります。
車椅子で旅行をするときの服装は?
車椅子で旅行をするときは、服装にも注意しなければなりません。
特に意識すべきポイントは、以下の3つです。
- できるだけ明るい色の服を選ぶ
- 丈の長い服は避ける
- 伸縮性に優れた服を選ぶ
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
できるだけ明るい色の服を選ぶ
車椅子で安全に旅行を楽しむためには、できるだけ明るい色の服を選ぶことが大切です。
黒や茶色などの服は目立ちにくいため、事故のリスクが高くなります。
白や明るい色の服を着ることによって、夜間でもしっかりと目に入るため、不慮の事故を防げるようになります。
丈の長い服は避ける
気温が下がる冬場の旅行では、防寒対策が欠かせません。
ただ、車椅子で旅行をするときは、マフラーやストールなど、袖の長い服は避けた方が良いです。なぜなら、車椅子の車軸に巻き込まれる危険性があるからです。
もしマフラーやストールを身につけていく場合は、簡単に取れないようにしっかりと巻くようにしましょう。
その他、コートやスカートも巻き込みのリスクがありますので注意してください。
伸縮性に優れた服を選ぶ
車椅子に乗っている方と旅行をする際、ほとんどは介護者が車椅子を操作すると思います。ただ、状況によっては本人が自らの手で車椅子を操作しなければならないケースが出てきます。
このような場面に備えて、伸縮性に優れた服を選ぶようにしましょう。そうすることによって、肩の可動域が広がるため、スムーズに車椅子を動かせるようになります。
車椅子で旅行をするときの注意点
では次に、車椅子で旅行をするときの注意点をいくつか紹介していきます。
車椅子用階段昇降機の利用方法
車椅子の方の移動をサポートする「車椅子用階段昇降機」。
駅や商業施設などに設置されていることが多く、この機械を使えば車椅子に乗ったままでもスムーズに昇降できます。
車椅子用階段昇降機を使うときは、必ずブレーキをかけ、足を挟まないように注意しましょう。
車椅子での移動方法
車椅子は、道路交通法では「歩行者」に分類されます。
そのため、基本的には右側通行となり、歩道を利用することになります。ただ、車椅子はある程度幅がありますので、歩行者や自転車などとぶつからないように注意が必要です。
また、マンホールをはじめとする段差やくぼみなどに引っかかるとバランスを崩しやすくなりますので、前方に注意しながら進むようにしましょう。
車椅子で旅行をするときに使える便利なサービス2選!
近年では、車椅子での旅行をサポートしてくれるサービスが登場しています。
このようなサービスを活用することによって、車椅子での旅行がより快適になります。
今回は、代表的な2つのサービスを紹介しますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
福祉タクシー
車椅子で旅行をするときに大きなハードルとなるのが「移動」です。
自家用車で移動をする際は、乗り降りが大変になります。電車や新幹線、バスや飛行機を利用する際は、乗り降りだけでなく、トイレなどの問題も出てきます。
このような問題を解消し、快適な移動を実現するためには、福祉タクシーを利用するのがおすすめです。
福祉タクシーとは、車椅子のまま乗り降りできるタクシーのことです。
介護保険が適用される「介護タクシー」とは違い、
- 利用目的
- 家族の同乗
- 要介護認定の有無
などに関する制限がなく、基本的には誰でも気軽に利用できます。
近年では、福祉タクシーを使って旅行や観光、買い物などを楽しむ方が増えてきていますので、快適な移動と楽しい旅行を実現したい方はぜひ活用してみてください。
UDタクシー
UDタクシー(ユニバーサルデザインタクシー)は、車いすに乗ったまま乗降できるミニバンタイプのタクシーで、東京都をはじめとする全国の主要都市で導入が進んでいます。
国土交通省の公式サイトでは、UDタクシーを次のように説明しています。
ユニバーサルデザインタクシーとは、健康な方はもちろんのこと、足腰の弱い高齢者、車いす使用者、ベビーカー利用の親子連れ、妊娠中の方など、誰もが利用しやすい”みんなにやさしい新しいタクシー車両”であり、街中で呼び止めても良し予約しても良しの誰もが普通に使える一般のタクシーです。
引用元:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_koutu/tabi2/ud-taxi/ud-teach.html
※運賃料金は一般のタクシーと同じです。
つまり、車椅子の方専用というわけではなく、誰でも気軽に利用ができるものとなっています。
車いす利用者だけでなく、子育て中の親や荷物の多い旅行者にとっても便利な移動手段です。ユニバーサルデザインという名の通り、誰もが快適に利用できる設計が特徴となっています。
UDタクシーは街中で手を挙げて利用することもできますが、事前に予約をしておくと安心です。主要なタクシー会社のアプリや電話予約サービスを活用すれば、スムーズに手配ができます。
現在、東京都内をはじめ、大阪、福岡、札幌などの主要都市や地方都市でも利用可能なエリアが広がっています。旅行先での利用を検討している場合は、事前にUDタクシーが導入されているか確認すると良いでしょう。
UDタクシーは、気軽に快適な移動手段を提供する、新しい選択肢の1つです。ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか?
バリアフリーツアー
車椅子を使っている方や、介護が必要な方を対象に、バリアフリーツアーを提供する旅行代理店が増えています。
バリアフリーツアーでは、介護資格保有者が旅のプランを作成したり、同行したりしてくれるため、安心して旅行を楽しめるようになります。
プロの手を借りながら旅行に行きたいという方は、お近くの旅行代理店に相談してみましょう。
まとめ
車椅子に乗っているからという理由で旅行を諦めるのは非常にもったいないことです。
今回紹介したポイントを意識し、事前にしっかりと準備をすれば、車椅子での旅行を満喫できるようになります。
また、近年では車椅子での旅行をサポートしてくれるサービスが複数登場しています。
中でもおすすめなのが、福祉タクシーです。
福祉タクシーを利用すれば、車椅子での旅行で大きな障壁となる「移動」の悩みや不安を解消できるため、安心して旅行を楽しめるようになります。
車椅子に乗っている方と一緒に旅行を楽しみたいという方は、持ち物の準備や行き先の選定に加えて、福祉タクシーの利用も検討してみてください。